Lifeart -ライファート-

 二人の時間を取り戻す為に―――。それは、遠い昔の話。

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Lifeart -ライファート-



1.   - d r e a m -


 今、私は彼と二人で悠久の終わりの夕空に佇んでいる。


 それ以外は私には判らない。

 あたたかく、夕陽のそれは心の光のようで。


 ふわふわとした感覚。

 本当に心地良い。

 私はそれが、夢だと判っていた。

 ただ、もうなにも考えたくない。

 夢の覚めるまで、もう少し―――

 もう少し、このぬくもりだけを感じていたいと思った。


2.   - h e a r t -


 空。

 まず最初に、それが見えた。
 外の草原で、横たわっていつの間にか寝てしまっていた。

 穏やかな時間。

「よお、寝顔見させてもらったぞ」

 誰か、覗き込んできた。
 その人の顔が、私の視界に薄い影を生んだ。

 私は直ぐに、それが誰かという事が判った。だから、答えた。

「セイレン」

 私の、相方。
 そして、私の騎士。

「全く、眠りたくなるよな、ここ来ると」

 照れくさそうに笑う。
 私はふと、それをずっと覚えてみたくなった。

 何故かそう思えた。

 たぶん、彼が仕事に行ってる時に思い出すためだと思う。

 彼の顔に、草の欠片が付いていた。
 私はくすりと笑って、それを拭う。

 彼は、また照れくさそうにしながら、話して。

 夢のような時間。
 夢から覚めたというのに、夢のようで。

「ガレッタ、これから何処行く?」

 幸せで。

 この人と一緒に時間を過ごせて。本当に幸せでいました。

 心を許すような穏やかな風、綺麗に塗られたような蒼い空で。

 彼と一緒に、過ごすんだ。

 ふと、心の中で、こんな言葉が浮かんだ。


 ……これからも、こうしていたかった。


3.   - k n i g h t -


 私は、夢を見ていました。

 とても、とても幸せな夢を。

 でも、目の前は暗くて、残酷で。

「…………」

 私達は、脅威の前に、敗北していました。

 隣に居る、セイレンと誓ったのに。

 白い白衣を着た研究者達が、おぼろげな意識の中、見えた。

 彼は隣で、白い壁に赤を混ぜて、壁に座り掛かっていて。

 そして、私は、全身が傷だらけで、
 ……足の感覚が無かった。

 視界がぼやけて、痛くて、悲しくて、
 涙をぽろぽろと流して、ぼやけた視界で彼の姿を見る事が出来なかった。

「…………ぁっ……ああ」

 彼の姿が何処にも無い。私は何処?

 言葉では言い表せないほど、孤独でした。

 直ぐ目の前に居るのに、手を出せない。一緒に戦えない。

「カレッ……タ……」

 こんなに理不尽な事で、私と私の大切な人を失ってしまう。

 もし……あなたと私が、普通に出会っていれば。
 こんなことにはならなかったのかな?

 いのちでないいのちが、私達に根付いている。

 それを知らされたときから崩壊は始まっていたのかな?

 こんなにも悲しいなら、ここに生まれた意味なんてあったのかな?

 でも私達は生きていた。

 ここで。

 私は、あなたをまもりたい。

 あなただけが、私をまもるのではなくて、私もまもりたい。彼を。

 まもり……たい。

 手をのばした時、私の手に、彼の手が重なった。


―――ありがとう―――


 そう聞こえた気がした。

 彼の手が離れた。

 彼の呻き声が聞こえた。

 彼が立つ音が聞こえた。

 液体が落ちる音と飛び散る音、罵声と悲鳴が聞こえた。

 金属音がした。


 彼は、私の騎士として、戦ってくれていた。


 あんなにボロボロだったのに。
 あんなに今にも世界から離れそうだったのに。

 なんで、いまは嬉しいのだろう。

 私は何も出来ないのに。
 私の好きな人、セイレンは私をまもってくれる。


 すべてが終わったとき、彼は歩み寄ってきた。

 私はさっきとは違う涙を流していた。

 暖かい、


 暖かい涙を。


 いつかと同じような、照れくさい笑顔が、霞んだ景色の中にあった。

 懐かしかった。

 セイレンは私を抱きしめた。だから私も抱きしめ返した。

「……―――」

 それだけで、なんだか安心できる。

「絶対に、取り替えす……。誰にも殺されないで済む時を」
「……うん」

 手を取って、次には私を抱きしめる。
 何も言わなくても判っていた。

 私達の思い出を。

 私達の幸せだった時を。

 私達二人っきりで取り戻そうって。


4.   - s o n g -


 世界が炎に包まれようとしてる。

 最終戦争、ラグナロク。

 私達がその事に気づいた時には、もう遅かった。

 全てが、意味を持つ終わりに向かって動いていた。

 灯火。

 消える。

 落ちていく。

 また何処かの街が消えていく。

 本当に、世界の終わりなんだって思った。

 巨大都市ゲフェニアから、私達は最後になる旅に出た。

 少しでも良い方向に動けば、私達二人はそれで良かった。


 私達はホムンクルスと呼ばれる人工生命体。

 この世界に存在するべきではないいのち。

 それを知らないまま私達は世界に放され、そして捕らえられた。


 適合資格。

 そしてラグナロクの始まりの、ギャランホルン終末の笛


 それでも、偶然彼と出会った私は恋をして、彼も私に恋をした。

 だから、それを引き裂こうとしている今を変えたいと思った。

 私達は生まれた意味と思い出を取り戻すために誓い合った。


 最後になるかもしれないこの悠久の終わりの夕空の下、

 世界の為にでもなく、

 誰の為にでもなく、

 私達の為に、

 その為の戦いで、私達は精一杯生きた。


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